図書館スタッフのおすすめ視聴覚資料・図書

1918年6月1日(土)、ベートーヴェン「第九」が板東バンドウ(現在の徳島県鳴門市)で演奏されました。日本で最初の演奏とされています。
 第一次世界大戦中に中国・青島で俘虜となったドイツ兵のうち、約1000人が収容されていた板東俘虜収容所で演奏されたのです。今回紹介する板東俘虜収容所に関する資料からは彼らの生活についてだけでなく、そこから発信された文化、文明、日本人との交流、経済活動、情報の記録など多くのことを知ることができます。明治維新から第二次世界大戦にいたる歴史の流れとしても読むこともできます。
 音楽について言えば、オーケストラや吹奏楽団が結成され、2年半の間に30回以上の演奏会を催しています。ピアノ、室内楽や歌曲の演奏会もありました。音楽が教授され、楽器修理の店もありました。これらのことは収容所内で発行されていた新聞「ディ・バラッケ」や演奏会プログラム(色刷りもあった)などから知ることができます。
 音楽だけでなく絵画、スポーツ活動、パンやケーキが製造され、健康保険組合もある、板東収容所では松江豊寿所長の俘虜に対する人道的な扱いにより様々な活動が許されていたようです。
 「第九」は徳島で日本初演された、とだけ知っていましたが、これらの資料を見ていくことは驚きの連続でした。



■≪DVD≫ 請求記号 DVDA818
バルトの楽園(がくえん)」



■≪図書≫ 請求記号 210.69/5 
棟田 博「板東俘虜収容所物語−日本人とドイツ人の国境を越えた友情」



■≪図書≫ 請求記号 210.69/6
冨田 弘「板東俘虜収容所−日独戦争と在日ドイツ俘虜」



■≪図書≫ 請求記号 210.69/7
星 亮一「松江豊寿会津武士道−板東俘虜収容所物語」



鳴門市は昭和47年にドイツ館、平成5年に鳴門市ドイツ館を建設しました。そこには板東俘虜収容所のすべてが展示されているそうです。建設に当たってはドイツに帰国したかつての俘虜であった人々からも協力が寄せられました。  H.Y.