Die Reise und Menschen (旅と人間)

私の青春時代に多くの刺激を受けた1冊を紹介します。


■小塩 節(おしお たかし)著
ブレンナー峠を越えて」ヨーロッパ芸術の光と影  請求記号 762.3/16/

著者はドイツ文学者でかつてNHKの「ドイツ語講座」の講師を長く務めたこともある人です。


ブレンナー峠はアルプスの北側の国からイタリアに抜ける山道です。当時は馬車で行かなければなりませんでしたが、現在はトンネルが開通して峠を越える必要は無くなったようです。

モーツアルトゲーテは明るいイタリアの風土や芸術、文化を吸収するために、この峠を越えて度々イタリアを訪れました。彼等だけではなく、北側の国の人々にとってイタリアは憧れの地でした。ゲーテは、声楽を学んでいる人なら誰でも知っている有名なミニヨンの詩で、「君よ、知るや、レモンの花咲くあの南の国」とイタリアへの憧れを謳っています。
この本で著者は音楽だけではなく、文学や宗教、ヨーロッパの精神や風土にも分け入り、とても示唆に富んだ視点を私達に示してくれます。音楽を学ぶ人が広い視野を持って、それぞれの専門性を豊かに広げることができるよう一読を奨めます。
                                              S.Y