唱歌・童謡を調べる



長引いた暑さもようやく収まり、秋らしくなってきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?



唐突ではありますが、この「秋」という季節を歌った唱歌や童謡は数多くあります。海沼実作曲の「里の秋」もその一つです。この作品は教科書にも掲載されていて、日本の名曲100選にも選ばれているため、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
唱歌や童謡には、歌詞を読んでいるだけでは分からない背景を持っている作品も多いかと思います。今回は「里の秋」を題材に、唱歌や童謡をより深く知ることのできる資料を紹介します。


まず、OCM-OPACで「里の秋」「海沼実」と入れて検索してみると、楽譜は79件、視聴覚資料は22件あることが分かります。
楽譜や視聴覚資料の中でも楽曲解説が付されていることはよくありますが、そこからあまり満足する情報が得られないこともあると思います。

そんなときに便利なのが、『日本童謡事典』です。





日本童謡事典 / 上笙一郎
767.7/80/



この資料から、「里の秋」が敗戦直後の1945年にラジオのテーマ曲として作られたものであること。作曲者がラジオ局から復員兵を迎える歌の依頼を受けて、戦時中に自身の元へ送られていた斎藤信夫の詩「星月夜」を思い出し、戦時色の見える歌詞を改作して生まれた作品であることが分かります。



また、本学図書館は「里の秋」の作曲者である海沼実の実孫が記した『童謡, 心に残る歌とその時代』という資料を所蔵しています。





童謡, 心に残る歌とその時代 / 海沼実著
767.7/66/



この資料からは、この曲が流されるラジオ番組の放送直前のリハーサル時に、タイトルが「星月夜」から「里の秋」に改題されたという情報が得られます。



その他にもC号館閲覧室の学校唱歌・童謡の分類の書架には、複数の関連資料が配架されています。(書庫内にはもっとたくさんの資料があります。OCM-OPACの詳細検索画面に請求記号”767.7”と入れて検索してみてください。)


実際に”767.7”の分類エリアに配架されている『童謡へのお誘い : 童謡大学』の中にも「里の秋」について書かれた項があり、さらに作詞者の斉藤信夫という人間についてや、歌詞の元となった「星月夜」が生まれるまでのエピソードを知ることができます。






童謡へのお誘い : 童謡大学 / 横山太郎著
767.7/61/



より本格的に唱歌や童謡を研究する場合には、別の方法もありますが、唱歌や童謡を歌う時、その背景を少し知っておきたいという場合にこのような資料は有効だと思います。
『童謡, 心に残る歌とその時代』も『童謡へのお誘い : 童謡大学』も、ページをパラパラめくっているだけで、よく知っている作品の知られざる内容などが次々と分かり、大変興味深いのです。
Wikipedia等で作品についてを検索するのは簡単ですが、本学図書館所蔵の資料を手に取って色々な発見をされてみてはいかがでしょうか?



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