なぜあの人の声に、あの音に、魅力を感じるのだろう?

倍音





音楽を学ぶ方々にとってはそう珍しくないこの言葉。
それがどういうもので、「倍音」によって聞き手の感情はどのように動くのか…

音によって受ける印象を、「倍音」という点から紐解くこの一冊。


■「倍音」―音・ことば・身体の文化誌― 
/ 中村明一著
 (請求記号:761.12/59/)
 





倍音」―それはまさに、現代に残された「魔法」と言ってもよいでしょう。(前書きより抜粋)



確かに存在し感じてはいるはずなのに、多くの人がその存在に気づいていない「倍音」。
その不思議な力を「魔法」と表した筆者は、楽器の音や歌声に限らず、有名人の話し言葉にも触れて具体的に「倍音」の効果を説明されています。



・森進一のモノマネで、「森進一です」の一言だけで皆が笑うのは何がおかしいのか?

・日本語に訳されて歌われるオペラが、聴いていてなぜしっくりこないのか?

小津安二郎黒澤明などの昔の映画をみると話し方がまったく違っている。日本語にどんな変化がおこったのか?




これらもすべて「倍音」という点から考えられていてとっても斬新!
さらに日本人と西洋人の「倍音」の感じ方の違いや、日本人と「倍音」の関係、さらに尺八奏者である筆者は「倍音」を自在に変化させることの出来る尺八についても触れています。

この章もなかなか興味深い内容です。
例えば、尺八ほど「倍音」の種類(「倍音」には二種類あるんです!)と量の調節をゼロから全体にまんべんなく含まれる所まで自由に操ることのできる楽器は、世界的にみても例をみない無い事など。
日本の楽器がそんなにも多彩とは…とても誇らしくてわくわくしませんか?


何気なく感じているものも、掘り下げてみるとこんなにも奥が深いんですね。
この本を読めば、友達の声の聞こえ方。自分の声の出し方が変わる…かもしれません。



H.K

大阪音楽大学の歴史

 大阪音楽大学は長い歴史を持つ大学なので、関連する資料がたくさんあります。
 先日、出納をしていてこんな書籍を見つけました。

 大阪音楽大学七〇年史-楽のまなびや-
 請求記号:760.6/24a


 昭和63年発行。本学の創立から70年の歴史が分かりやすくまとめられています。追録や80年バージョンもあり、学内の写真がたくさん掲載されているので本学の歴史を知ることができます。一度手にとって見てはいかがでしょう。


 ところで、出納した経緯ですが、ある利用者が本学の校歌(作詞・作曲は創立者の永井幸次先生によるもので格調高い曲です。)の四声体の楽譜を探されていました。入学式や卒業式の式次第には載っているのですがなかなか見つからず、ようやくこの大阪音楽大学七〇年史-楽のまなびや-に載っていることが判りました。すぐに見つかりそうなものですが、四声体の楽譜となると案外少ないのですね。


keisuke

家での過ごし方

毎日暑い日が続きますね。
こうも暑いと、外出が億劫になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
涼を求めて、家で過ごす時間が増えがちなこの時季にオススメの本をご紹介します。

まさに家の写真集、「音楽家の家」。


◎「音楽家の家」、請求記号:762.8/217/



それも、18世紀から20世紀のいわゆる巨匠と呼ばれる音楽家の家を紹介した本です。
モーツァルトベートーヴェンショパンなど総勢23名の音楽家の家が収録されています。
これまで遠い存在だった巨匠たちの家を訪問したような気にもさせてくれるこの本、読み物としても充分読み応えがあり、
楽家の人となりもうかがえるような評伝も満載です。
また、期待通り、もしくは期待を裏切るような家の写真を見ながらあの作品はこの部屋で誕生したのかと思いを馳せると、いつも演奏している作品により深い理解が示せるかもしれません。


他にも、同シリーズの「芸術家の家」、「作家の家」の2冊も併せてご覧ください。


◎「芸術家の家」、請求記号:702.06/14/


◎「作家の家」、請求記号:902/6/


美しい写真を見ているだけでも、夏の暑さを忘れさせてくれます。
インテリアやアンティークに興味のある方にもお薦めです。
これら本を参考に素敵な空間を作り出して、家で過ごす時間に楽しみを見出すのもいいかもしれませんね。


T.Y

雨の日の過ごし方

6月に入り、雨の多くなる季節となりましたね。憂鬱な気分になっていませんか。
気分を変えるために図書館を利用してみてはどうでしょう?
図書館の資料のほとんどは書庫にあるため、皆さんは利用したい資料をOPAC検索している
ことと思います。でも、閲覧室の資料は開架ですので直接手にとりながら選ぶこともできます。
だからこそ普段ならほとんど手にとらないような本を選んでみませんか?


つみきのいえ』(726.5/11/)C館・閲覧室


(世界中のアニメ映画祭で数々の栄冠に輝いた短編アニメ「つみきのいえ」をその監督と脚本家の
手で絵本にしたものです。『つみきのいえ』(DVDA776)D館・書庫もあります。)


絵本なんてと思う心をおさえてページをめくってみてください。
なんとなく心が洗われてきませんか。


絵本についてもう少し興味がでてきたなという方には、


雑誌『MOE』

(2013年4月号から図書館に所蔵しています。)


をオススメします。絵本のことがいろいろのっているので、ぜひ手にとってみてください。



やっぱり、音楽に関するものがいいという方には、
【絵本で読む音楽の歴史】シリーズはいかがでしょう?


ベートーヴェン』(762/116/4)C館・閲覧室

(現在、教育実習の展示スペースにあります。あわせてそちらもどうぞ。)


他にも、『オペラのすべて』(762/116/7b)C館・閲覧室
     『ジャズの歴史』(762/116/8)C館・閲覧室
     『ショパンとロマン派の音楽』(762/116/5a)C館・書庫
     『モーツァルト古典派音楽』(762/116/3a)C館・閲覧室
     『ロックの世紀』(762/116/6)C館・閲覧室
     『バッハとバロック音楽』(762/116/2)C館・閲覧室
     『世界の音楽と人々』(762/116/1)C館・閲覧室
があります。
知っていると思っている内容でも何か新発見があるはずですよ。



移動中のちょっとした時間や雨宿りしてから帰ろうかなと思った時には
図書館で新しい本との出会いを見つけてみてください。

M.M

オダサク

みなさんは「オダサク」を知っていますか?
夫婦善哉」や「可能性の文学」といえばピンとくる人もいるかもしれません。

オダサクこと織田 作之助(おだ さくのすけ)は、1913年(大正2年)10月26日生まれの大阪出身の作家で、満33歳という短い生涯に100編を超える優れた文学作品を残しています。
太宰治坂口安吾と並んで無頼派と呼ばれ、戦後まもなくの文学界において一世を風靡しました。
代表作の「夫婦善哉」は、何をやってもダメな柳吉とそれを献身的に支える蝶子との不幸ながらもユーモアのある情緒豊かな夫婦の物語です。
とてもテンポのよい人情噺で、そこにはなんだかとっても“関西風”が感じられます。


◆「夫婦善哉 請求記号SB/840/



◆「可能性の文学」 請求記号904/8/



オダサクはまた、「軽音楽の大家」を自称していました。
義太夫節や三味線の音色に幼少から親しみ、歌手ディック・ミネの流行歌を口にするかと思えば繊細優美なクラシックにも通じていて、携帯用の蓄音機を持ち歩いていたとも言われています。
20歳の時に書いた文芸誌の劇評で、サラサーテ作「ツィゴイネルワイゼン」のメロディーの素晴らしさに触れていたり、小説「秋深き」にはフランクの「ピアノ五重奏」、京都・西木屋町ダンスホールを舞台にした『土曜夫人』にはアルゼンチンタンゴの名曲「ラ・クンパルシータ」が登場します。また「道なき道」はバイオリンを巡る父娘の芸道一筋の物語が描かれています。
そしてわが大阪音楽大学付属図書館では、大栗裕作曲のオペラ「夫婦善哉」を所蔵しています。
音楽に造形の深い織田作之助の描く世界に大栗裕自らも共感するものを感じたのでしょう。


そんなオダサクが今年2013年に生誕100年を迎えます。
地元大阪では彼の青春時代にスポットを当てた舞台の上演や「夫婦善哉」のテレビドラマ化など、生誕100年という節目の今年、様々な記念事業が企画、検討されているようです。

みなさんもぜひ、この春、大阪の文学や芸術に触れてみてください♪



nini

歌唱指導の工夫

もうすぐ教育実習シーズン!今回は、大阪教育大学音楽教育講座製作のDVD、『音楽科授業改善のためのデジタルコンテンツ【誰にでもできるステップアップ教材】』を紹介します。



■DVDA1005
Volume1

わらべうた・合唱曲を用いて、カノン(輪唱)と、オスティナート(ある一定の音型を繰り返すこと)の伴奏を紹介しています。歌唱教材のアレンジ方法の勉強にお勧めのDVDです!



■DVDA1006
Volume2

Volume1よりステップアップした教材を収録しています。特に、教員採用試験合格後、小学校に配属となる方には、「もみじ」(小学校教科書掲載教材)がお勧めです。DVD収録の編成は、カノンと二声の響きの両方を学べる女声二部合唱です。



C号館図書館・D号館試聴室では、皆さんの実習期間に合わせ、教育実習特別貸出を行います。(※詳しくは、スタッフまで)

教育実習に是非、図書館資料を活用ください。

T.K☆

春日醉起言志

春です。


花は芽吹き
鳥はさえずり
風は温かく
月はいつものように月です。


三寒四温に揺さぶられた日々も
彼岸を過ぎてぐんと桜の気配が増し
三離四会ともいうべき別れと出会いの狭間で
日本社会全体が慌ただしく支度をしている様子です。


移りゆく自然と対峙していると、
自然はいつの世も在るがままの生を全うしていることに改めて気づきます。
勿論、人もまた然るべきですが、時に人は、慌ただしく欲を全うしようとします。
それもまた人。それも然るべきなのかもしれませんが、
社会の枠組の中で個人や個性や真理、大切なものや人が理不尽に侵害されるような事象が
大波小波で押し寄せてきて、息苦しくなる時も昨今少なくないのではないでしょうか。
私達の住む社会では誰しもそのような窒息経験があると思います。芸術に携わる人なら尚更のことでしょう。


そんな時に、私は、本来の自然に立ち返ります。
今であれば、冬の後姿に寂しさを覚えながら来る春の木漏れ日に目を閉じます。
魂の声を聴くように、風に撫でられ、雨の話を聴き、いつものように月に面会を求めます。
そして、好きな漢詩を書いて詠み、幽静な世界にしばし身をおきます。


春に因んだ有名な漢詩を一篇ご紹介いたします。


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春日醉起言志 / 李白
處世若大夢  世(よ)に處(お)るは大夢(たいむ)の若(ごと)し
胡為勞其生  胡為(なんすれ)ぞ其の生を勞する
所以終日醉  所以(このゆえ)に終日醉い
頽然臥前楹  頽然(たいぜん)として前楹(ぜんえい)に臥す
覺來眄庭前  覺め來(きた)って庭前(ていぜん)を眄(み)れば
一鳥花間鳴  一鳥(いっちょう)花間(かかん)に鳴く
借問此何時  借問(しやもん)す 此れ何の時ぞ
春風語流鶯  春風(しゅんぷう)に 流鶯(りゅうおう)は語る
感之欲歎息  之に感じて歎息(たんそく)せんと欲す
對酒還自傾  酒に對すれば還(ま)た自(みず)から傾(かた)むく
浩歌待明月  浩歌(こうか)して明月(めいげつ)を待つ
曲盡已忘情  曲盡(つ)きて已(すで)に情(じょう)を忘る


※下し文引用
■「李白」 / A. ウェイリー ● 請求記号: IS/864/ (写真左)
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詠み終えた後に、現代生活による閉塞の強要で凝り固まっていた魂がすっと解きほぐされます。
(現代語訳は訳者により微妙に違うので、敢えて書きません。上記李白にも現代語訳は掲載されています。)


因みに、この「春日醉起言志」は、かのマーラー作曲の交響曲大地の歌」の第5楽章で
歌われるテキストの基になっていることでも有名です。


この他に、私がお薦めする漢詩に関する本をご紹介いたします。


■「漢詩と人生」 / 石川忠久 ● 請求記号: BS/785/ (写真中)
”人生はままならない、ままならないのが人生”と始まり、
その上で、そんなもんだ、淡々と生きていくのだと、人生の趣を様々な漢詩を通して説きます。
著者の言う「汲めども尽きない漢詩の味わい」を確かな専門性と分かりやすい解説で読み解いていきます。


■「漢詩 美の在りか」 / 松浦友久 ● 請求記号: IS-2/768/ (写真右)
訓読詩歌と日本詩歌の音声やリズム、聴覚的見地からの考察もあり、
漢詩に“音楽”すら感じられる内容です。
「美の在りか」という副題について筆者が述べているあとがきも美学として必読。


どちらも文庫本で質量とも読みやすいです。
人生や世界の美しさを再認識し、自分らしく前に進めるよう背中を静かに押してくれます。







特に、学生の皆さんには、自分の専攻に関わる音楽のみならず、
様々な音楽、様々な芸術、様々な人、様々な世界に触れてほしいと思います。
(その対象に漢詩もある、くらいの意味合いで、私の趣味で恐縮ですが今回ご紹介いたしました。)
その中で、胸の内に響くものとそうでないものがでてくると思います。
初めは趣味判断でいいので、そのご自身の感覚を大切に磨いて、
音大で研鑽を積まれている技術や知識を融合させて、
目先の情報や流行に囚われ過ぎず、
この世の流れと、自らの血の流れを感じ、
七回転んで八回起きて、ご自身の歩幅で、
自らの人生や世界がにじみ出る音楽、そして生き方を目指していただきたいと願っています。
その先で音楽や芸術は、他者の人生や世界とつながり、真に豊かな社会を育むことでしょう。




皆さんと世界の明日のために、、、いや、そんな大層でなくともお気軽に、
本学付属図書館を是非ご活用していただければ幸いです。



park