pionnier −パイオニア

例えばスポーツの世界で、オリンピックや世界大会で新記録を出す選手。
彼らは本当に素晴らしく、その努力と功績は輝かしいものです。

しかし、どんなにすごい記録を出そうとも、技の完成度を上げようとも…
超えられないのはその分野の先駆者や、草分けの人々です。
初めて、その分野で世界の舞台に立った人。もしくはそのスポーツを始めた人たち。
種が発芽するエネルギーのように力強い、彼らの情熱や功績にはかないません。
彼らがいなければ、その後のスターたちは生まれなかったのですから。

終戦後のパリにも、そんな先駆者となった日本人女性がいました。


◆限りない想いを歌に 請求記号:760.4/470/


石井好子さん。
洋版のレコードや楽譜がなかなか手に入らなかった時代からパリで歌い、帰国後は演奏活動だけでなくパリ祭を開催し、音楽事務所や日本シャンソン協会を立ち上げたりと、シャンソンの普及に尽力したシャンソン歌手です。
エッセイストとしても有名で、ベストセラーになった書籍もあるほどです。

この本はそんな著書のひとつ、日本経済新聞のコラムで連載していた記事をまとめたものです。

小学校時代、音楽学校時代、留学時代、パリで歌っていたころ、そして帰国後からシャンソンの殿堂であるオランピア劇場でのリサイタルに至るまでが石井さんの言葉でつづられています。

特に面白いのは、45周年記念リサイタルとオランピア劇場での公演に至るまでが書かれた後半の「この一年」という章です。名だたるシャンソン歌手が演奏してきたオランピア劇場で、“フランス人の観客を前に日本人で初の単独リサイタルをする”という想像もつかないような重圧を抱えながらも、生き生きと情熱をもってリサイタルへと準備を進めていく様子が臨場感たっぷりに描かれています。演奏をする人にとってはとても刺激を受ける内容ではないでしょうか?

石井さんの著書は他にも所蔵しています。
どれも少しずつ違った視点だったり違うエピソードが入っていたりするので、是非いくつか読んでみてください。 

H.K